クビキリサイクル

クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣い (講談社ノベルス)

クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣い (講談社ノベルス)

作者の青臭さが恥ずかしいというのが第一印象。登場人物は、時々深そうな台詞を話すが、実は何も言っていないことに気づいた人は、この作品にはまれないだろう。これはライトノベルの皮をかぶった本格ミステリという表現が近い。キャラクターの造形はアニメっぽいのに、中身は骨太の本格ミステリである。人物の書き分けもよくできていて、頭が痛くなるくらいの変人ばかり出てくる。ミステリ好きな人だったら、途中でトリックに気づくかもしれないが、最後にどんでん返しが待っていたりと、サービス満点。時々引用される文章からも、読者の並ならぬ読書量が伺える。これで20歳というのだから恐れ入る。でもサヴァンの使い方は間違い。
ひとつだけ気になったのが、ことあるごとに「戯言だよなぁ」とつぶやく主人公の自虐的傾向である。誰でも若いときは、一時的に自虐的な考えにとらわれてしまうことがある。これが作者の傾向なのか、主人公の特徴として書かれているのかわからないが、前者だったらいち早く卒業してほしいものである。この主人公の性格は、特に物語とは関係ないのだから。自虐というのは、読んでいるものに不快感しか与えない。自虐的傾向のある読者には受け入れやすいかもしれんが、ネガティブな感情を助長するだけである。
若さが爆発した、非常に恥ずかしい作品ではあるが、小説とはそういうもんである。今後どう変化していくか楽しみな作家ではあるが、しばらく待たねばならないだろう。