読書は控えめに

ここ1年くらい小説にどっぷりはっていて、トータルで150作くらい読んだ。多い月には25冊も読んだ。ジャンルはなるべく偏らないようにと思い、ネットで調べて評判のよかった、SF、ミステリ、ラノベ、ファンタジー、新書、自己啓発本などを新旧国内外問わず様々なものを読んだ。評判になった作品を選んだだけあって、どれも面白かったし、お気に入りの作家も見つけた。読めば読むほど読みたい本が増えていった。
だが、ある日友人に「あんまり本ばかり読まないほうがいいですよ」と言われてはっと思った。本ばかり読んでいると、頭でっかちの人間になる、考えているばかりで行動の伴わない人間になる。確かにそのとおりだ。本を読んで、自分の経験した以上のことを学んでしまうと、判断が要求される場面に遭遇しても、結果はわかっていると思い込み、結局何もしない。人の意見には批判的になるくせに、効果的な対案にまで頭が回らず、自分の意見がいえない。社会において、"しない"ことと"できない"ことは同じだ。全力を尽くさないから、自分の本当の実力がわからず、過信してしまう。
カルロス・ゴーンの著作に「カルロス・ゴーン経営を語る」がある。前書きで彼は「この種の本で役に立ったものは何もない」と書いている。書店には様々な著者の自己啓発本、経営指南書、ビジネス書があふれているが、他人の著作の本を参考にして成功した人は少ないのではないか。数冊の座右の書をあげる人はいるが、少なくとも、ビジネス書を読み漁った人は皆無だろう。成功をする人は、まず初めに大きな動機があるからで、少なくとも書籍から何かを得ているわけではない。しかし、これらの本を手にする読者は、自分にも何かが得られるのではないかという期待を持っているのだろう。
たしか、人は読んだ内容の10%しか覚えていないが、経験からはことは90%憶えているという言葉を聞いたことがある。つまるところ、人は経験からしか学べないということだ。成功した人間から、立派な言葉をもらっても、自分の器に収まらないものはどんどんこぼれていく。
経験は、自分から行動しないと得られない。行動するということは、つまりはリスクをとるということ。リスクをとり、自ら体験することによって人間は成長する。