エレガントな宇宙

エレガントな宇宙―超ひも理論がすべてを解明する

エレガントな宇宙―超ひも理論がすべてを解明する

3年位前に一度読んでいたが、そのときは理解できなかったので、いつかもう一度読んでやろうと思っていた。というわけで、今回はじっくり読んだ。
一般相対性理論に始まって、特殊相対性理論量子力学超ひも理論と、素人が理解に必要な知識を系統立て、丁寧にわかりやすく書かれている。複雑な数式が描き出す世界を、巧みな比喩を使い、かなりのページ数を割いて読者に理解してもらおうという努力は相当なものだ。第3部まではすんなり頭に入ったのだが、第4部からはさすがに目眩がした。それでも前回読んだときよりは理解できたと思う。
この本によると、超ひも理論は、物理理論の大事な過程、予言→実験→実証を未だ経ていないのだそうだ。なるほど確かに理論上では、ひも理論は相対論、量子力学や粒子や時空の性質をうまく表現しているが、それは発見された事実を後追いしているに過ぎない。確かに、計測できないほどの短いプランク長の中に、6次元空間が巻きこまれ、1次元の紐がそこに巻き付いているという世界は眉唾物だ。だが、ひも理論は現代物理学の様々な問題を解決する。もしひも理論が完璧にすべての事象を説明したとして、間接的にしか観測できない理論がすんなり受け入れられるだろうか。ここ数年、ひも理論の新しいニュースを聞かない。廃れてしまったからだろうか、まだ成熟してないからなのだろうか。
読み終えて感じたのは、私にとってこの本の価値はひも理論ではなかったということだ。この本は、人間の思考力の限界まで挑戦させてくれ、読者を思考の奥の深遠なる世界まで連れて行ってくれる貴重な本であった。