笑わない数学者

笑わない数学者 MATHEMATICAL GOODBYE (講談社文庫)

笑わない数学者 MATHEMATICAL GOODBYE (講談社文庫)

犀川の考え方が好きだ。理系と文系の違いはいろいろあれど、身もふたもないことをさらっと言えてしまうのが、理系の特徴のひとつなんじゃないだろうか。犀川の発言の中にもそれは随所に現れている。与えられた条件から、犀川は解のひとつを示すに過ぎず、動機はわからないという。そりゃそうだ。
さらに犀川は、クライマックスで解がひとつに絞れない問題に直面し、「不定」という答えを得る。ここでの会話は非常に緊張感がある。だが犀川は、ひとつの答えを仮定する。犀川はその人物を否定するために、解を定義とせざるを得ないのだった。私は文庫で読んだのだが、ノベルズ版の北村薫氏の解説も必読。
萌絵との関係もどんどん進展して行き、こちらのほうも気になる。