クロスファイア(上)

クロスファイア(上) (光文社文庫)

クロスファイア(上) (光文社文庫)

初めての宮部みゆき。上巻を読み終わったところだが、正直言って今ひとつ。
物語は、人間をあっという間に炭化できるパイロキネシスという能力を持つ青木淳子と、彼女の起こした事件を捜査する石津ちか子の二つの視点で進んでいく。直前に読んだ「マークスの山」と構造が似ているせいか、人物の掘り下げの浅さ、警察の捜査の手際の悪さが気になった。少年犯罪を題材にしているが、彼らの心理を描くことははじめからあきらめているようだ。彼らははじめから理解のできない異星人のような描写をされている。また、彼らの家族を奪われた遺族の心理も、どうもうまく描けていない。私自身経験がないが、復讐のために彼らを殺したいとか、そんな単純な心理なのか。
また、少年犯罪を起こす輩や、その関係者を無差別に殺していく淳子にも感情移入できない。上巻終盤にかけて、第三の勢力が登場してくるあたり、今後の展開が面白そうだが、実は淳子自身が彼らと同じだったとか、そういう救われない展開もまた面白い。さて後半はどうなるか。