マッカンドルー航宙期

太陽系随一の天才マッカンドルーと、女船長ローカーの近未来ハードSF。5話からなる連作短編だが、各話は時間的に連続している。どの話も、作者の考えた化学的トピックを中心に話が進む。作者が物理学博士、数学博士だけあって、そのトピックに関するこだわりは相当で、科学的考証がかなりしっかりしている。その上で、しっかりとエンターテイメントした物語になっているのは見事。とくにマッカンドルーの人柄が傑作で、理系大好き人間は思わずにやりとするのではないだろうか。
巻末では、作者自身による作中の科学的考証の説明がかなり詳しく載っているという、大変親切なつくり。このこだわりようには、なにかマッカンドルーと被る所があって、マッカンドルーは作者の分身なのではないだろうか。