ウッドストック行最終バス

ウッドストック行最終バス (ハヤカワ・ミステリ文庫)

ウッドストック行最終バス (ハヤカワ・ミステリ文庫)

全体の3分の一を過ぎるまで、コメディタッチの作品だったことに気づかなかった。衝動的な殺人ほど捜査が難しいというが、まったくそのとおりだ。新たな手がかりをつかむたび、モースが仮説を組み立て、殺人にいたるまでのストーリーを創作し、ことごとくはずしまくるのだが、偶然が重なり、手がかりのかけらもないこの事件ではそれも無理はないのではないか。シンプルな事件から、こうして物語を膨らませていく手腕はアクロバティックですばらしい。